ミタマシズメ
機体は依然、左右に揺れ動きながら

『どこか』を目指しているように感じた。

大阪発東京行き。『どこか』も何もない。

この飛行機は東京を目指して飛んでいるに 違いないのに、

私はこめかみの辺りで悪い予感に囚われていた。と、その時。

「座席の下にある救命胴衣を取りだしてつけてください」

CAたちが、口頭でそう言いながら座席を回り始めた。

私はパッと座席前に備え付けられた「安全のしおり」を

網から引き抜き、開いた。

救命胴衣、着用のしかた・・・

ページをせわしなくめくっていたら「あや…あっちゃん」

後部座席から少女の母親が席を立ってこちらに来た。

その顔色は、真っ白だった。

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