黄金時間が過ぎるまで〜番外編

「小包」

その日は朝から雪が降っていた。

喫茶店『空の名前』では、開店準備を終えた千歳と鳴海が、カウンター席に腰かけて外を眺めていた。

「つもるかな…」

鳴海がボンヤリと呟いた。

「つもるといいね、今日はクリスマスだし」

千歳は立ち上がって、カウンターに入るとコーヒーを入れはじめた。

「コーヒー飲む?」

「うん」

コポコポとコーヒーサイフォンの沸騰する音だけが、店内に響いている…

外は無音の世界に、なりつつあった。

店内は閉ざせれた空間のように、お客が来る気配がない…

オーブンの中から、今日出されるケーキの焼ける香ばしいバターの香りが漂ってきた。

千歳が焼き上がったクッキーのラッピングをしていると、扉が開きドアベルが鳴った。

「やあ、さつきちゃん元気?小包届いてるよ」

明るい声とともに、郵便配達人が店に入って来た。

「ヒマそうだなぁ」

「久しぶりですね、ハルさん。さつきちゃん元気ですか?」

千歳は認印を引き出しから出すと、手渡した。
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