ありのままのキミ






「…………ん」


「起きたか?」



気がつけば、そこは広瀬の家だった。



ベッドに寝ているようだから広瀬の寝室か。




「起き上がれるか?」


広瀬が顔を覗き込んでくる。

相変わらず、眉間に皺が寄っている。




「うん」


「治療するからリビング来い」



そう言って広瀬が寝室を出て行くから私もベッドから降りて後をついて行く。












「ったく。またお前は喧嘩しやがって」


「今回は喧嘩売ってきたのあっち」


「んで?ちょっとストレス解消に、か?」



呆れたように言って消毒液を付けたコットンをポンポンと唇の傷に押し当てる広瀬。


……痛い。




「本当によぉ。お前は短気と言うか……」


「別に、そんなんじゃねーし」


「あーあ。せっかく綺麗に産んでもらったのに怪我してよ。親に申し訳ないとは思わねえのか」



ったくよー、と文句を言う広瀬。



思わず、治療する広瀬の手を振り払った。コットンを掴んでいたピンセットが飛んでいき床に落ちる。





「余計なお世話」

思ったよりも冷たい声が出る。



「、知佳……?」


「気安く呼ぶな。────アンタ、私の何を知ってんの?名前、学校名?それだけで私の何が分かんだよ」



困惑したように目を見開く広瀬だが眉間の皺は未だ刻まれたままだ。





「親に申し訳ない?んなの思わねぇよ。あっちはこっちのことなんかどうも思ってねーんだから」


ハハッと自傷気味に笑う。

それが妙に自然にこみ上げた笑いで、ムカッと来る。





「私が顔に傷作ろうが、喧嘩しようがっ。どうでもいいんだよっ!!」




 

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