ありのままのキミ
ザーッと水で洗い流せば、傷口に激痛が走った。
「だっさ」
一人、ポツリと呟く。傷口は出た血の量の割に浅いみたい。
うあー。これ、病院行くべき?ちゃんと治療しないと変な菌とか入りそ。
でもこのこと説明するのダルいし。
血も止まりだしたから横のベンチにドッカリ座る。
真っ黒な夜空は曇っていて星一つ見当たらない。あ、一個だけ淡いけど光ってる。冬の星って何だっけ。オリオン座?
まぁ、どうでもいいけど。
「お前、大丈夫か!?」
ぼんやりとそんなことを考えていると大きな声が耳に入ってきた。
ぼんやりしたまま、声の方を見ると眉間に皺を寄せた長身の男が立っている。
サラリーマンなのかスーツをばっちり着こなし、黒髪を流していて顔も男前だ。
「血が出てるじゃねえか!」
「……あぁ。うん。でももう止まったから」
腕を見れば、まだ少し血は出ていたけどさっき程まではない。ただ、服に付着した血液が大怪我のように見せているだけで。
「そういう問題じゃねえんだよ!細菌が入って化膿したらどうすんだ!」
「えっ、ちょ」
だが男は私の言葉も聞かず、私の腕を取ると半ば引き摺るように公園を出た。