ありのままのキミ





『ただいまーっ』


玄関のドアを開けて言うけど返事はない。



私はランドセルから白く筒状に丸められた紙を取り出して二階に駆け上がった。



手前のドアを開ける。



『お母さんっ!』


すると背を向けてパソコンに向かってカタカタと打ち込む母親の姿があった。




『あら、帰ってきてたの?』


『……うん。あのね!今日ね、賞状もらったの!』


『すごいわねえ』



こちらも見ずにそう言うお母さんは忙しくキーボード叩いている。



『お母さん、忙しいの……?』


『え?あぁ。ごめんね。お母さん忙しいからお外で遊んで来てくれる?』



お母さん?

昨日もそうだったよね?


一昨日もその前も。

この前の日曜日も動物園に行く約束してたよね?



楽しみにしてたのに、お母さんもお父さんも忘れてたよね?




『……うん。お外で遊んで来るね。お仕事頑張って!』


だけど邪魔だって思われたくないから、私は物分かりのいい、いい子を演じる。




ねぇ、お母さん。


気付いてる?



もう何日も私の顔見てくれてないよ?


もう何日も私の名前、呼んでくれてないよ?






ねぇ、気付いてる?





 
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