ありのままのキミ







「じゃあ、帰るわ。治療ありがと」


お礼だけ言って帰る私に文句の一言でも言ってくるかなと思ったがまさかの




「送るよ」


「え、いーよ。歩いて帰る」


「いや、もう遅いし」


「いや、帰る」


「いや、送る」



それから帰る送るの言い合いが始まったのだが結局折れてしまった。いや、折れてやったんだ。私、大人だから!!





車は結構高そうな奴で。家の前まで送ってくれた。




「おお。デカいな」


「……デカいだけだよ」


「そうか?」


「じゃあ、送ってくれてありがと。あ、名前。私、鮎川知佳。アンタは?」


「ん」


シートベルトを外しながらそう言った私に男が差し出したのは名刺。




「お前また怪我しそうだからな。まぁ、何かあったら電話でもして来いよ」



車から降りて、男の車が見えなくなるまで見送ってから名刺に目を通す。




「エスツーハウス 営業部長 広瀬祐志(ひろせゆうじ)」


この会社って結構有名……。


名前の下には電話番号が書いてあるけどこれって会社用とかじゃないの?



まぁ、掛ける気もないけどさ。



私は名刺を乱暴にポケットに突っ込んでから家の中へと入った。





 


 
 
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