ありのままのキミ
そして放課後。
エスツーハウスと高々に掲げられてるデカいビルの前に私は立っていた。
手には駅前の有名な店のマドレーヌ。
こんな大きくなくても良くない?と言える自動ドアの入口を通り抜け、美人受付嬢を見つける。
「すいませーん。広瀬っちゅー人に会いたいんですけど」
「……アポイントメントは取ってますか?」
受付嬢は一瞬こそ眉をひそめたがすぐに笑顔で対応してくる。
「アポ?取ってないけど…、そんなのいるの?」
「申し訳ありませんが…」
え?ここは一社員にもいちいちアポとらなきゃいけない制度?
そんなんあるの?
「いや、瞬間で終わるんで」
「ですから、困ります」
私が引かないと思ったのか受付嬢は強めにそう言ってくる。
何だと?
「チッ。もういいよ」
受付嬢に不機嫌に告げてからエレベーターの方へ歩く。エレベーターの横には部署配置が書かれてあるパネルがある。
んーと、営業は五階か。
「困ります!」
受付嬢を無視してエレベーターに乗り込もうとすると警備員が来て腕を掴んできた。
「いっ」
左腕の傷口の場所を掴まれて痛みが走る。
「キミっ、来なさい!」
「っ、離せよ」
振り解こうと腕を振るがそれが余計に痛い。つか、コイツ馬鹿力!
今すぐ蹴り倒したい。けど、ここは会社で。しかも、お礼をしたい人の。そんな人の会社で暴力だけは避けたい。
けど、
「離せっつってんだろーがボケが!痛てんだよ、傷口が開くだろーが!!」
暴言だけは許して欲しい。