人な私と機械な君と
「いやぁホント一時はどうなるかと思ったわぁ。」
「アンタらが揺すってたせいでもあるけどな。」
この私の命の恩人のお方は2-10組の学級委員長で八ッ橋 律子(やつはし りつこ)さん。誰でも分け隔てなく(私にも)積極的に話し掛けてくれる優しい人・・・。2年前に大阪から引越してきたらしく、東京弁(?)を頑張って使おうとしているけどまだ慣れていないようです。
「あ、ありがとう八ッ橋さん・・・。」
「あぁ、気にせんでえぇてっ。なんたってうちは委員長やしなっ。」
へへっと照れ隠しに笑って見せる八ッ橋さん。ホントにいい人・・・・。
「それで何で委員長さんがここにいるのかしら?」
とちぃちゃんが問いかけてみると八ッ橋さんは何か思い出したように慌てている。
「あっ!?すっかり忘れとった!!たっちゃん先生に頼まれて点呼とってたんやった。」
そういい彼女は挨拶をし作業の続きへと移っていった。
「あっ。そうそう、なぁ美鈴。」
トコちゃんも八ッ橋さんにつられ何かを思い出したように私に声をかけてくる。
「どうかしたのトコちゃん?」
「今日さぁ、私らが美鈴のことで賭けしてたって言ったじゃんっ。」
「うっ・・・そのことは思い出させないで・・・。」
私の朝の髪型を思い出すと気分がどんどん重くなっていく。
「そうよ橙子(とうこ)ちゃん、不謹慎よっ。」
「違う違うってぇ。そうじゃぁなくてさ、私らその賭けのせいで今日林にマイケルバーガーを奢るんことになってるんだけどさ、美鈴も一緒に行かないっ?」
トコちゃんはそう言って万遍な笑を私に向けてくれる。
「え・・・・・・?わ、私も行っていいのっ?」
新学年になってからの初めてのお誘いに少し顔がニヤケてしまう。それもそのはず、友達が非常に少ない私は何かの遊びや付き合いに誘われる事は殆どないのです。そして平日には学費を少しでも出す為に周4のバイトをし、休日やバイト休みの日といえばムカつく弟のお守りをしたり近所の良(りょう)とキャッチボールをする程度・・・・。
こんな私でも誘ってくれるちぃちゃんとトコちゃんにはホントに感謝しております・・・・・。
「ありがたやありがたや・・・。すりすり」
思わず手を合わせトコちゃんを拝んでしまう。
「えっ、何で拝んでんの・・・・!?」
その行動にトコちゃんは少し引いている。
「いえいえ、でもホントに私も行っていいのっ??」
「おいおい、いいのなんのって美鈴がいた方が私らも楽しいっての!」
「そうよっ、みぃちゃんがいるといろいろと沢山いじれるものねっ。」
「い、いじるって、な、何をですかっ??」
私の体が本能的に少し震えてしまう。
「そりゃあなっ。」
「ふふふ、そうねっ。」
そう言って2人で顔を合わせ笑っている。そしてその笑みを見つめる私・・・。
やっぱりこの2人はとてもいい友達・・・・。この2人といると、心が温かくなっていくな・・・・。そう思っていると私も思わず笑ってしまう。
私のクラスを見回してみる。1年の時と同じ兄弟さん達、また何か馬鹿なことをやっている。それを止めようとしている一年の時と同じ委員長の八ッ橋さん。そして、この掛け替えのない2人の親友__。騒がしくはなりそうだけどまた皆と一緒に学園生活を過ごせるのか・・・・。やっぱり嬉しいな・・・・・・__。
私はそう思うとまた顔がニヤケてしまったので、下を向いてそのニヤケ顔を前髪で覆い隠した・・・・。