人な私と機械な君と
 学食へ着いた私ととこちゃんは食券の販売機待ちの列に並ぶ。

う・・・、生徒達がいっぱい・・・・。

私は人ゴミに酔ってしまう。学食は言うまでもなく、800人程の生徒達で賑わっていました。私は人ゴミが苦手で昼食はいつも教室で食べています。なので学食はこの学校に入ってから2,3度しか来た事がありません。

「おい美鈴、顔色悪いけど大丈夫かっ??」

「だ、大丈・・・ぶ・・。」

「いやいやいや、明らかにおかしいだろっ!?私のことはいいから美鈴は席取っといてくれよ。」

「う、うん・・・・分かった・・・。」

私は空いている席を探していく。兄弟さん達も見つけたが壁ガラス際の席が空いていたのでそこに座ることにした。

以外といい席取れたな・・。とこちゃんにメールしとかなくちゃ。

私は自前の弁当を広げとこちゃんが来るのを待つ___。

数分待つこと、とこちゃんがきつねうどんを盆に乗せこちらへと運んで来る。

「おーー、いい席取れたじゃんか!」

「うんっ。」

とこちゃんの言うとおり私もここはいい席だと思う。学食の3分の1の壁がガラスとなっていて昼食を取りながら裏庭の景色を満喫したり野球グラウンドのフェンス越しに野球の練習や試合を見たりすることができます。

とこちゃんは席に座って箸を割り唾を飲み込む。

「んじゃぁ美鈴、冷めないうちに早く食べようぜっ!!」

「そうだねっ。」

「んじゃあ、いっただっきま・・・・____。」

「「キャーーーーーーーーーーっ!!!」」

「___ひっ!!」

とこちゃんがきつねうどんに箸をつけようとした瞬間、耳を塞ぎたくなるような女生徒達の歓声が野球グランド側の学食から聞こえてきた。

「何だ~~ったくぅっ。」

とこちゃんと私が声のした方向に顔を向けるとそこには数人の女生徒達が野球グラウンドにいる[ある人物]に見とれていた。その人物とは・・・・_____。

「何だ・・。りょうのファンの人達かっ。」

私はそう言ってホッと胸を撫で下ろす。私の幼馴染のりょうこと住之江 良太(すみのえ りょうた)は何故だか女子に結構人気があるのです(私には何故あいつがモテるのか理解が出来なかったりします)。今はちいちゃんみたいにりょうも昼練があるのでしょう(美馬くんも野球部だったような・・・)。

「何でりょうってあんなにモテるんだろうねっ?・・ってあれ?とこちゃん?」

「・・・・・・・・・・。」

私が話しかけてもとこちゃんは反応しない。意識が野球グラウンドの方へと向かってしまっているようだ。

こんな遠く思い耽るとこちゃんを見るのは久々だな・・・・____。

私がそう思っているととこちゃんの遅い返事が返って来る。まるでとこちゃんがグランド方面にいて伝わることが遅れてしまっているかのように・・・。

「そりゃあ・・そうだろ。あいつ、ルックスだけじゃなくて頭も良いし・・・、野球部のポジションはサード、ショート、ピッチャー・・・、そして打席は4番の強打者・・・・。この学校の期待のエースの1人・・・・。そりゃあぁ、モテますわぁ・・___。」

「ぇ・・・?」

私は言葉に詰まる。とこちゃんは私が分からない程の小さなため息を吐きテーブルに頬杖をつく。

「で、でも性格とかはとこちゃんも知ってると思うけどあれだよ・・・・?」

私はりょうの悪いところを伝えようと何故か頑張ってしまう。

「なぁ美鈴・・・。」

「ん、何っ?」

一息間を置きまた遠い目をさせながら言葉を続ける。

「アンタは近過ぎるんだよ・・・・・。」

「え・・・・、どう言うこと??」

「・・・・そう言うことっ。」

私には分からなかった___。とこちゃんの言いたいことがどういう意味なのか・・・__。

「それに・・・・。」

とこちゃんは話しを続ける。今言った意味の補足か何かだろうか?

「あいつ・・せいか・・・・・くないよ・・・。」

「へ・・・?今、何てっ?」

とこちゃんの声があまりにも小さく聞き取れなかったので私は思わず聞き返してしまった。

「いやぁ、何でもないってぇっ!ほら美鈴、冷めちゃうから早く食っちまおうぜ!!ほらほらぁっ。」

そう言ってとこちゃんはきつねうどんを食べ始めていく。

「え?あ・・・そ、そだねっ。」

私も言われて弁当を食べ始める。

とこちゃんはいつもの笑顔を浮かべているように見えるが、私にはそうは見えなかった_____。
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