人な私と機械な君と
 時刻は夕方の4時30分を過ぎようとしていた。その頃私は学校の帰り道であるコンビニで肉まんを買いそのコンビニをちょうど出たところだった。外に出ると夕日の光りが私を真横からこれでもかという程照らしてきた。私にはその夕日に[寄り道なんてしてないでさっさと帰りなさい]と言われているようにも感じた。しかし私はいつもの通学路の坂を下りずそのまま肉まんと一緒に[ある場所]へと向かった。

下校時に買い食いとはいささかはしたないと思いつつも私はやめることは出来ないでいました。私の学校生活の中での数少ない幸せの一つだからと言えば許してくれるのでしょうか(誰に許しを請うているのやら。)?

今日もあの人に会えなかったな・・・・。

あれから一週間、あの告白を盗み聞きしいていた事を謝ろうと思ってはいるのですが彼と一度も会うことがありません。

実際告白された人には別に謝らなくてもいいけど(すごく冷たかったし)告白していた人には絶対謝らなきゃ。だから彼に会いたいのは謝るためじゃなくて告白していた人を聞き出すためであって・・・、あれ?でも聞き出すのも告白してた人に悪いんじゃ・・・・。でも謝らなきゃいけないのは事実で・・・・・・・・。

私は自分で謝るか謝らないかのエンドレス地獄にはまっていった。

でも、彼に会いたいのは本当にそれだけなのであろうか?本当は彼と話してみたいだけなのではないのであろうか?

彼と一瞬でも間近で目が合ってしまったことを思い出す。あの日から何度あの一瞬の出来事を思い出したのであろうか・・・・。

「本当は私、あの一瞬で海堂くんのことす・・・____。」

私はそう呟きかけたところで私の口が急に塞がる。二文字の単語が頭の中を過ぎったからである。

いや、ナイナイナイナイ!!!絶対にそれだけはありえない!!す・・・・、そう!海堂くんは素敵だから私はきっと魅了されてるだけっ!!・・・・・でも、それもなんか駄目な気が・・・・。

私はそんなことを思っているうちに目的地に到着した。近くには[泉の森丘公園]と掘られた木の板が立て掛けてある。私は木々で挟まれた30段程ある階段を登って行く。

この場所は私にとって安らぎの場所だったりします。この公園は小さいですがその場所から見える街の景色は絶景です。しかし高さが危険でそこにあるのは屋根付きベンチとシーソーと動物を形どった乗り物(イス?)だけ。子供の遊び場というには程遠く、私以外に訪れる人は殆どいません。なのでこの場所は私にとってちょっとした秘密基地だったりします。週に1、2回学校の帰りに間食出来るもの(殆ど肉まん類)を買いこの場所の長い屋根付きベンチで夕日や街並みを眺めながら肉まんを食べる事が私の数少ない楽しみの一つでもあります。

私は階段を登り切る。その公園の告知版には[危険なので子供は遊ばないで下さい]と書かれている。

いつもこの注意書きが目に入ってくるけど、それじゃあ公園の意味がないような・・・。

ははっと私は苦笑を浮かべ長い屋根付きベンチに目を向ける・・・____。

「ぇっ・・・・・____。」

雲で陰っていた赤い赤い夕日が屋根付きベンチを覆うように照らしていく・・・。

なんで・・__?

そこにいたのは私にとっては絶対に思いもよらぬ来客者___。

私は一瞬幻覚や夢の類のものだと目を疑った__。

どうしてここに___?

私が座るはずだった場所に1人分の席が埋まっている__。

どうしてここに彼がいるの__?

すらっとした長い足を組み片手で本を開きながら夕日の明かりで照らし読む青年が1人、ベンチの真ん中に腰を下ろしていた___。

海堂・・・・くん・・・____?

私はその時まだ知らなかった。初めて目が合ってしまった時からもう、私と海堂くんの運命の歯車は急激に重なりつつ合ったことを___。
< 40 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop