リタイア宣言【TABOO】

 腕を引かれて、ゆっくりと歩かされる。

「運動はいきなり止めるな。体の血液が滞って心臓に負荷がかかる。徐々に心拍数を落としたほうがいい」

「はい」

 マラソンに慣れてるのかな?

 長い距離を走ってきたのか髪からしたたる汗。頬から首筋をつたう。

 その色っぽさに、ドキリとした。


「どうせ、男の前でいい女でいようと無理に付き合ったんだろ?」

 彼の切れ長の瞳がふと細められて、私は我にかえる。


「そ……そんなことどうだっていいじゃないですか! それに健康のために走っていたんです!」

 真新しいジャージとシューズを彼は見下すように睨みつけてから、ふん、と鼻で笑った。



 
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