テントウ虫は、いつだって
廊下に出ると丁度バスケ部の部員達が走ってきた。
先陣を切っているのは噂の1年男子生徒。噂通り、速すぎる。他の1年生と1周以上は差をつけているだろう。
「(あ、あの子……)」
ふと、イチカがある事に気づいて噂の生徒のもとへ駆ける。
と、同時に
「うわっ?!」
噂の男子生徒が転倒しそうになった。
イチカが気づいたのは靴紐のことだ。ほどけてしまった紐に気づかず、あの速度で走ると踏んで大転倒という可能性が大きいと感じたのだろう。
間一髪。
イチカは男子生徒が転けるより速く、腕を掴んで引き寄せた。
その際、イチカは力を入れすぎて後ろに倒れこんでしまった。
「大丈夫だったか?」
「え、あ…はい。
ありがとうござ、って!」
「どうした?」
「えー…あの、ですねぇ…」
イチカ側に倒れ混む=噂の生徒が押し倒してる形。
どーもこーもないです、
これは一体どうすれば…?
なんて噂の生徒が困っているにも関わらず、相変わらずイチカはその状態でいる。
「えーと、…た、立ちましょうか」
噂の生徒が切り出すと、ようやく立ち上がってお互いに正面から顔を合わせた。
「ん、お前。足捻ったか?」
「え? あっ!」
「保健室、行くか」
「や、大丈夫です!これくらい何でもな「ほーう」、イッテェ!!」
さりげなーくイチカが足をつつくと思った通り、男子生徒はうずくまった。
「な、何するんですかっ?!」
「んー?痛くないんだろう?」
「ッッ、それは、えーと……」
涙目でシドロモドロになる男子生徒にイチカはニッコリ微笑み再三、
「大人しく行こうなー」
鬼だ、鬼がいる。