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妙に思考が冷静なのは、心が限界だと叫んでいるからかもしれない。いっそのことバレてしまえば――そんなことを思う自分は本当に最低だ。
"私の彼氏はファンのみなさんです"
裏切ってるのはこの場合どっちなのだろうか。ひとりの男とこうなってることはファンに対する裏切りに、彼氏はファンみんなと公言していることがこの男に対しての裏切りになるのだろう。

私の心は――、
正直、もうわからないのだ。

アイドルの仕事には誇りとやりがいを持っている。では、この状況は何なのだろうか。自分の今までと、これからを踏みにじるこの行為は。この密会がバレたら間違いなく終わりだ。
けれど――――離れられなくなってしまったのだ。自分もアイドルのくせに、私のことを好きだと言うこの男から。

番号もアドレスも消そうと思うのに。
今日こそはもう会わないと思うのに。
何度も、離れようと思うのに。

そう思うのに――

気付いたら今日も私は、彼がいるホテルの部屋まで来てしまった。

(こんなの誰のためにもならないのに)


――――ああ、本当にバカなことをしている。
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