TRAP!
訪れたそこは、まさに…合コン会場であった。
もう一人の調査員と共に。
すました顔して…案内された席へと向かう。
席は男女分かれて座っていて……。
私は、深呼吸してから…顔を上げる。
「……………。」
いた……。
席の一番奥の方に…、つまんなそうにしている…一人の男。
渡 蒼生………。
「はじめまして。」
最高の猫かぶりをして…目の前にいる人に、挨拶をする。
すると……、
ゆっくりと、ワタリの視線がこちらへと移されて。
大して驚いた様子も見せずに、視線を逸らした。
「………。」
奴とは対角線の、一番遠い席……。
この状態で、話し掛けようだなんて……。
到底、無理が気がした。
乾杯が始まり、酒が進んでいくと……。もう一人の調査員も含め、それぞれが…席を移動しながら、盛り上がりを見せ始めた。
『ああ…、帰りたい。』
基本……、合コンとやらは得意じゃない。大学時代に数回行ったけれど…居場所がなくて、なんとなくひとり酒を楽しんでいたクチだ。
一方のターゲット、ワタリは…、と言うと。
…そう。
5年前とは比べものにならないくらいに。妖艶で…、女慣れした様子。
まるで…知らない人のように…笑顔を振りまいていた。
「羅衣ちゃんは…、こういうの、苦手なの?」
気を遣ってくれたのか…、一人の男が話し掛けてくる。
「ええ、まあ……。」
落ち着いた雰囲気……。
悪い印象はしない、男だった。
「……あはは、いけるクチなんだ。女の子が日本酒とかって…何かいいね。かわいこぶるより…。」
「………。…ただの親父女子ですよ。」
こうなりゃ旨い酒を飲まなくては…やってはられない。
酔った勢いで…どうにかしよう。
そう…、考えていたのだった。
……が、
「……羅衣ちゃん。合コンで日本酒は…ないんじゃない?」
ひょいっと…銚子を取り上げられる。
「…………!」
いつの間にか…
隣りに来ていた、ワタリ……。