海賊王子ヒースコート(1)
第三話:海賊王子
闇が支配する夜の海。
そんな視界の悪い中を、ブラックエンジェル号は南東へ全力疾走していた。
「ちっ、もっと上げねぇと追いつかれるか…」
ヒースコートとアイリーンがベッドに入った頃、船長ダリウスは自室で一人愚痴を零していた。
追っかけてくる海軍の戦艦が意外と速い。
闇に乗じて逃げ切れるかとおもいきや、あっさりとはいかなかった。
「まあ、ランバートに舵任せてるからどうにかなるか」
危なくなったら彼が一番ベストなコースを選び、船を進ませるだろう。
彼は優秀な操舵手だ。
「船長~!失礼しま~す!」
突如ノックの音がして、レイバンが部屋に入ってきた。
「無駄にうるさいぞレイバン」
「スンマセン!」
「で?何か用か?」
レイバンは自分の後ろで小さくなっていた例の二人を差し出した。
「こいつら、どうします?」