海賊王子ヒースコート(1)

そんな国だからこそ、オグランドは海賊が逃げ込むには持って来いの場所なのだ。

軍がない。

厳しい取り締まりがない。

ようするに、自由に誰もが出入りできる。


オグランドの神に罰を受けるのは、オグランドの土を悪意を持って踏む輩だけだ。

悪意さえなければオグランドの神や民は海賊すらも歓迎する。


「真っ直ぐ南東に進め。目指すはオグランドのベルナンク港だ」


「了解しました」

頷きながら素早く地図をしまう。


「…ああ、そうだ船長」

彼は出入口のドアに手をかけながら、退出する前に余計なことを口に出した。


「ちゃんと慰めてあげて下さいよ?彼女に泣きつかれると仕事ができませんから」

「うるせー、わかってらぁ」



ダリウスは大きく伸びをしつつ、恋人未満友人以上のキャンディスにどう言い訳をしようかと悩むのだった。









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