海賊王子ヒースコート(1)
セルディスタは他国に比べて海軍に力を入れている。
陸軍も空軍も存在するが、周りが海なため必然的に海軍が主力となっているのだ。
それゆえ、軍の中で最新の技術をいち早く導入しているのが海軍というのも必然的であった。
「くそ!まだ追いつかねぇ。この船は最新型じゃねーのかよ…!」
最も速いと謳われる海軍ご自慢の軍艦に乗り込んだヴィンセント。
甲板に出て双眼鏡を覗き込みながら悪態を漏らしていると、共についてきたギルバートに呼ばれた。
「提督」
「何よ?」
「少々厄介なことになりそうです」
ギルバートの声が普段の二割増しで鋭い。
ヴィンセントは双眼鏡を離し、ギルバートに向き直った。
「どうしたのよ」
「このままでは我々が奴らに追いつくより先に、ブラックエンジェル号が我が国の領海から出てしまいます」