海賊王子ヒースコート(1)
セルディスタの領海から抜け出れば、軍艦での追跡が難しくなる。
「奴らは真っ直ぐ南東に進んでいます。おそらく、我が国の島には立ち寄らず、オグランドを目指していると思われます」
「オグランドの領海には軍関係は入れない…。全くもって小賢しいわね!!」
上司のように苛立ちを露わにはしないが、ギルバートだって同等の怒りを覚えている。
ゆえに、このまま追跡を諦めるという選択肢は彼の頭から排除されていた。
「提督、私に提案があります」
「ん?言ってみなさい」
ギルバートは畏まって自分の意見を述べた。
「オグランドに入れないのは軍のみです。ですから一度本土に戻って、軍の船ではない別の船で再び追跡するのが上策かと」
「別の船?何を使うつもり?」
ヴィンセントの問いに、ギルバートは不敵に口角を上げた。
「お忘れですか?私の実家は貿易商ですよ?」
商船に扮して追いかける。
それが優秀な大佐の考え出した作戦だった。