海賊王子ヒースコート(1)
自室から出ると、ヒースコートは隣の部屋のドアを叩いた。
「キャンディス!いるか?」
すると、すぐにドアが開いて不機嫌そうなキャンディスが顔を出した。
「何よ?」
「服を借りたい」
「ああ、あの子のためね。ちょっと待って」
そう言うと彼女はドアを閉めてしまった。
廊下で待たされるヒースコート。
自室のドアを横目に腕を組む。
(かなり怯えてたな…)
部屋に置いてきたアイリーンを思い出して、うーむと唸る。
今は自分がドアを見張っているから大丈夫だが、離れたら昨夜の繰り返しになるかもしれない。
(どうするか…)
軽く溜息をついていると、明るい声が聞こえた。