海賊王子ヒースコート(1)
「俺様はガキのお守りなんざしねぇから。めんどくせー」
擦り寄るキャンディスを引きはがし、何本目かわからない酒ビンに手を伸ばす。
「してやったらどうです?たまには」
「うぜーんだよヒースコート。テメーの目ん玉にナイフねじ込んでやろうか、あ゙あ?」
「結構ですよ。痛いんで」
冷静に返しながらヒースコートもかなり飲んでいる。
酔いは確実に回っていた。
「船長、そろそろ始めませんか?」
「は?まだ飲めんだろ」
「本気で潰れたらナイフすら持てなくなりますよ」
酔っ払った状態でのナイフ投げ。
場を盛り上げるべく飲み比べの間にやる余興だ。
的は壁に貼られている世界地図。
見事セルディスタ王国の首都トゥドゥールに刺さったら勝利。
トゥドゥールよりやや西にある海軍の本拠地ガルニカ港もよく狙う的になるため、これらの周辺はナイフが突き刺さって穴だらけだ。
「今回はどこにします?」
「そうだな…」
少し悩んだ後、ダリウスはニヤリと笑った。
「クオーツ島にするか」