海賊王子ヒースコート(1)
クオーツ島と聞いてヒースコートの眉がピクリと上がった。
クオーツ島はアイリーンの実家。
わざわざそこを指定するなど船長も意地が悪い。
「負けた奴が一週間、甲板掃除を一人でやる。いいな?」
「異存ありません。俺が勝つんで」
「言ってろ。吠え面かかせてやる」
まずダリウスが小型のナイフを手にした。
席に座ったまま距離のある世界地図に狙いを定める。
世界地図なだけに、大陸の国々と比較して島国のセルディスタ王国は描かれ方がかなり小さい。
その中でクオーツ島の大きさは1センチ程しかない。
酔っていなくても正確に当てるのは至難の業だ。
「行くぜ…――よッ!」
ダリウスの手から離れたナイフが、音を立てて壁に突き刺さる。
周りで見物していた部下達が近寄って確認すると、ナイフは目標より斜め上にあるクオーツ島近くのカーペルキング港を貫いていた。
「ちっ…カーペルキングかよ」
「じゃあ、俺の番だな」
仲間が引き抜いたナイフを受け取り、ヒースコートもそれを構える。