海賊王子ヒースコート(1)
翌日、朝食を終えたアイリーンを甲板へ誘ったヒースコート。
部屋に閉じこもってばかりより潮風を感じた方が気も晴れるだろう。
今日は天気も良いし波も穏やかだ。
「俺は下で仕事をしてる。何かあったら降りて来るんだぞ」
「心配すんなよ。オレが周り睨んどくからさ」
信頼できる甲板長のレイバンが監督しているので大丈夫だろう。
ヒースコートは頷いて階段を降りていった。
「お嬢さん、危ねぇから船尾には行くなよ?昨日ヤられて直ってねぇから」
「わかりました」
レイバンからの忠告を受け、他の乗組員の邪魔にならないよう注意しながら遠くを眺める。
どこまでも果てしなく広がる青。
海と空。
下を見れば海の深い青に吸い込まれそうな不安が押し寄せ、上を向けば空の清んだ青がモヤモヤした心を軽くしてくれるような気がする。
(不思議…。この船は海賊船。恐ろしいはずなのに、とても心が落ち着いているなんて…)
アイリーンがゆっくり深呼吸した時だった。