海賊王子ヒースコート(1)
「船長~、もっとしっかり磨いて下さいよ。まだ汚ねぇ」
「いちいちうるせぇぞレイバン!そこはこれからやるんだよ」
会話が耳に入り振り返ると、甲板をデッキブラシでゴシゴシ磨いているダリウス船長の姿があった。
昨夜のナイフ投げ勝負でヒースコートに負けたダリウスは、罰ゲームとも言える「一人で甲板掃除」を実行中であった。
「手伝いましょーか?船長」
「いらん!あっち行ってろ」
レイバンを追い払い、一人での掃除を続けるダリウス。
地味で汚れる清掃作業などをやらされているせいか、普段よりも二割増しでピリピリしているようだ。
「ジャ~マラ!」
唐突に鳴き声が響いた。
デッキブラシを握りせっせと腕を動かす船長のもとへジャマラガラスのジャッキーがやって来る。
「ジャッキー、悪いが今遊んでる暇は…って、なんでデカクなってんだ?」
なぜかジャッキーは巨大化していた。
自ら海に飛び込んだのか、全身ビッショリずぶ濡れだ。