海賊王子ヒースコート(1)

ジッと観察していると、ジャッキーは余っているデッキブラシを掃除用具入れの中から引っ張り出し、巨大化して力強くなった足でそれを掴んだ。

そして、飛びながらダリウスの隣で器用に掃除を始める。

そんな飼い主思いのペットを見てダリウスは苦笑した。


「ジャッキー、お前の気持ちはありがてーが、助っ人は必要ねーんだ」

うなだれるジャッキーからデッキブラシを回収して、もう一人にも呼びかける。

「つーわけで、お嬢さんの助っ人もいらねぇから」

ギクリとしたのはもちろんアイリーン。

彼女は掃除用具入れからデッキブラシを取り出そうとしていた。

ダリウス一人でこの広い甲板の掃除は大変だろうと思ったからこその行動だった。

「掴んだデッキブラシ置け」

「は、はい…」

凄みのある低音で命令されては大人しく従うしかなかい。

デッキブラシを元の場所に戻すと、アイリーンは恐怖と緊張で固まった。


「ったく…。なんでみんな手伝おうとすんのかねぇ。ホント、物好きな奴らだ」

ぶつぶつ文句を言いながら腕に力をこめる。

「俺様だって昔は親父にこき使われて、毎日のように甲板掃除やってたんだぞ。一人でできるッつーの」


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