海賊王子ヒースコート(1)
「船長の親父さんて、あの“義賊タイタス”ですよね」
レイバンが日課である剣の手入れをしながら尋ねる。
「ああ…」
「会ってみたかったなぁ~。粋な人だったって聞きましたよ」
「そうか。会えなくて残念だったな」
アイリーンは一人、首を傾げた。
「どうして会えないのですか?」
すると、レイバンが言いづらそうに少し声をひそめた。
「処刑されたんだよ。義賊とはいえ海賊だからな。海軍に捕まって即、ブランコ」
「処、刑…!」
現役海賊から語られる生々しい話にアイリーンは息を呑む。
そんなお嬢様を見てダリウスがさらに話を続けた。
「あの頃、海賊は縛り首って決まってたからな。今は一応裁判があるが…あんなもんはお飾りだ。連中は海賊を地獄送りにしたくてしょーがねーんだよ」
刺のある物言いにアイリーンが恐る恐る問い掛ける。
「ですから…海軍がお嫌いなのですか?」
ダリウスがピタリと掃除の手を止めた。