海賊王子ヒースコート(1)

「ああ。だから親父を殺したセルディスタの海軍……ギルバート・ロックウェルが憎い」

この時、ダリウスの表情は狂気を孕んでいた。

殺意を感じさせる瞳。

薄く笑う口元。


「知ってるか?お前の婚約者様は俺様の親父を生け捕りにした報酬に、今の地位を得たんだぜ」

人間の命を踏み台に、社会的地位を得る。

「許されるのかよ。そんなことがよぉ!」

込み上げる怒り。

ダリウスは傍に置いてあったバケツを蹴り飛ばした。

「船長!落ち着いて下さいよ!物に当たんの反対!」

「ああ~チクショー!!テメーら向こう行ってろ!!」

興奮状態の船長は危険だ。

レイバンは察してアイリーンを自分の方に手招いた。


(復讐の死神…。ダリウスさんがそう呼ばれる理由は、お父様のことが原因だったのですね)


彼は海軍、中でもギルバートに復讐するという誓いを胸に、今を生きているのだろう。


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