海賊王子ヒースコート(1)
レイバンに聞いても意味がなかった。
ヒースコートは悩みつつ席を立つ。
近くにあった酒ビンを片手に甲板へ。
出てみるとすでに日は沈み、視界には黒い海と濃い闇が広がった。
「ハァ…」
酒に口をつけながら、彼はボンヤリと天を仰ぐ。
「アイリーン…」
星が見えた。
(好きだ)
もう一口、酒を飲む。
「ハッ…今さら、か」
力なく自嘲気味に笑うと、おもむろに歌い出す。
「人の子として生まれ…愛を知った」
波の音を伴奏に。
「生きる喜びを知り…悲しみを知った」