海賊王子ヒースコート(1)
いつの間にか隣のヒースコートがいなくなっていた。
アイリーンはキョロキョロと辺りを見回し彼を探す。
(ヒースコートさん…)
ヒースコートが傍にいないとわかると、急に不安が押し寄せてくるから不思議だ。
思いの外、彼に頼っている自分に気づき苦笑する。
「お嬢さん。ヒースコートなら甲板にいるから、行ってあげて」
レイバンに教えられ、アイリーンは甲板へと続く階段を上がっていった。
そして聞こえた――“あの歌”。
「人の子として生まれ…愛を知った」
波の音を伴奏に歌うは…。
「生きる喜びを知り…悲しみを知った」
金髪の青年、ヒースコートだった。
「ヒースコートさん…?」
驚愕して目を見開く。
彼も、歌えるのだ。
(ヒースコートさんも…!?まさか、私が知らないだけで、この歌はかなり有名なものなのでしょうか…?)
グルグル考えているとヒースコートに気づかれた。