海賊王子ヒースコート(1)

「歌に興味があるのか?」

「え!?」

「気になったんだろう?この歌が」

顔を覗き込まれたのが何だか恥ずかしく、ヒースコートから少し距離をとろうとアイリーンは一歩下がった。

「はい……実は、私も少しですが…その歌を歌えるので…」

「えっ!?」

ヒースコートが目を丸くする。

「小さい頃、男の子に教えて頂いたんです。金髪の、男の子…」

「――っ!」

「名前は思い出せないのですが、彼との約束が忘れられないんです。大きくなったら、私を迎えに来て下さると…」

過去を懐かしむように話す彼女を驚愕の表情で見つめ、彼は小さく呟く。


「覚えて…いたのか…」

「え?」

「アイリーン…」


喜び、苦しみ、後悔、自嘲。

様々な思いがぶつかり合う中、ヒースコートはアイリーンの名を呼んだ。

そして、切なく微笑みながら…。


「ヒースコー…んっ!?」


彼女の唇を奪った。



< 168 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop