海賊王子ヒースコート(1)
「歌に興味があるのか?」
「え!?」
「気になったんだろう?この歌が」
顔を覗き込まれたのが何だか恥ずかしく、ヒースコートから少し距離をとろうとアイリーンは一歩下がった。
「はい……実は、私も少しですが…その歌を歌えるので…」
「えっ!?」
ヒースコートが目を丸くする。
「小さい頃、男の子に教えて頂いたんです。金髪の、男の子…」
「――っ!」
「名前は思い出せないのですが、彼との約束が忘れられないんです。大きくなったら、私を迎えに来て下さると…」
過去を懐かしむように話す彼女を驚愕の表情で見つめ、彼は小さく呟く。
「覚えて…いたのか…」
「え?」
「アイリーン…」
喜び、苦しみ、後悔、自嘲。
様々な思いがぶつかり合う中、ヒースコートはアイリーンの名を呼んだ。
そして、切なく微笑みながら…。
「ヒースコー…んっ!?」
彼女の唇を奪った。