海賊王子ヒースコート(1)
家を襲撃して海賊船に拉致。
この一連の行動を「迎えに来た」と解釈するのは些か苦しい。
が、アイリーンは苦笑して頷いた。
「許します…。またお会いできて、嬉しい」
「俺も…。同じ気持ちだ」
彼は立ち上がった。
ヒースコートの方が目線が高いので、アイリーンは彼を見上げる形になる。
暗闇にありながらもヒースコートの金髪はキラキラと輝いて見えた。
「銃口を向けられた時は驚きました」
「パーティーの時か…。すまない。本気で撃つつもりはなかったんだ」
「どうして、海賊に?」
問うと、彼はどこまでも広がる海に視線をやった。
「世界を見るために」
「なんだか、素敵ですね」
「…と言えば聞こえはいいが……本当のところは、あれだ。家出」
「家出!?」
「というより、父親に家から追い出された。“ちょっくら海賊にでもなってこい”と言われてな」
唖然となるアイリーン。
息子に海賊業を勧める親がいたとは、開いた口が塞がらない。