海賊王子ヒースコート(1)
「アイリーンと出会ったのは本当に偶然だったな…。俺の母親の実家がクオーツ島で、あの時は休暇を口実に遊びに来ていたんだ」
「そうだったのですか…」
「まさか可愛らしいレディーと出会うなんて思ってなかったから、正直かなりテンパってた」
「そ、そうだったのですか?」
「今も正直……いっぱいいっぱいな気がする…」
余裕そうに見えるが、意外と緊張しているようだ。
ヒースコートは船縁にもたれ、酒ビンに口つけた。
「ハァ……酔ってなきゃ…言えそうにない」
アイリーンをチラリと見やり、彼は続けた。
「だから今、言わせてくれ」
何でしょうと首を傾げる彼女に向き直る。
そして…。
「君が好きだ」
直球に告げられた恋心。
意味を理解してアイリーンの頬が一気に熱くなる。
「ギルバート・ロックウェルとの婚約を破棄して、俺と…」
そこまで言って、ヒースコートは唐突に言葉を切った。
真剣にアイリーンを見つめていた視線を、階下へ繋がる階段の方に向ける。