海賊王子ヒースコート(1)
「おい、そこにいるネズミ」
静かな怒りを込めたヒースコートの刺々しい呼び掛け。
「ネズミ…?」
アイリーンも気になって階段の方を見た。
「いるんだろ。出てこい」
すると、観念したように苦笑いしながらレイバンとランバートが現れた。
「チェ~、見つかっちまったか」
「貴方のせいですよレイバン。もっと上手に気配を消しなさい」
ランバートが眼鏡をクイッと指で押し上げ、理不尽な文句をたれる。
「お前ら。盗み聞きとは、いい度胸だな」
ヒースコートの怒りを孕んだ声音に怯むことなく、二人は笑顔で言ってのけた。
「貴方の一世一代の大勝負ですからね。物陰から生暖かく見守らせて頂きますよ」
「オレらのことは気にすんなって!見てるだけだから。な?」
ヒースコートの手がわなわなと震えた。
「お前らな……それがウザイってんだよ!!少しは気をつかえぇえ!!」
怒りを爆発させると、彼はアイリーンの手を引っ張り自室を目指して歩き出した。