海賊王子ヒースコート(1)
バンッと強い音を立ててドアを閉めると、部屋の主は直ぐさまベッドに寝転んだ。
「あぁ~…クソ…」
アイリーンはというと、ドアの傍でおろおろ状態。
ヒースコートの近くに行くべきか。
声をかけるべきか、ほっとくべきか。
好きだと告白してきた相手にどう接すればいいのか顔を赤くしながら悩んでいると、ヒースコートの呟きが聞こえた。
「好きだ……アイリーン…」
耳にした瞬間、ドクンと高鳴る胸の鼓動。
(ドキドキする…)
ヒースコートの声を、姿を、存在を意識して、恥ずかしいような、くすぐったいような、なんとも複雑な感情が内側から溢れ出す。
(これが…恋?)
婚約者のギルバートをこんなふうに意識したことはない。
彼を前にしても心は揺れなかった。
(それとも、ヒースさんが私を好きと言って下さったからドキドキしているだけ…なのでしょうか…)
自分の気持ちがよくわからない。
彼女は黙ったままヒースコートを見つめるしかなかった。