海賊王子ヒースコート(1)
こういった場合、どんな言葉を返せばいいのだろう。
告白された経験もした経験もないアイリーンは言葉に詰まった。
すると…。
「アイリーンは、どうだった?」
「え…」
「俺のこと、心にかけてくれたことは…?」
導くように優しくヒースコートが問い掛ける。
「……私は…」
焦らずゆっくり思い返してみる。
「私の心にも、ずっと……ヒースさんがいらっしゃいました」
美しい思い出として胸にしまっていた出会い、約束。
あの歌を繰り返しては、ひと夏の思い出に登場する金髪の少年が幻でないと自分に言い聞かせた。
「忘れられなくて…またお会いしたくて…今度はいついらっしゃるのだろうと、楽しみに…」
していたのだが、突然、自分に婚約話が舞い込んできた。
このままでは少年が迎えに来る前に自分が人妻になってしまう。
「ですから、本当のところ…ギルバート様との婚約が決まった時、とても悲しかったのです」