海賊王子ヒースコート(1)


 甲板ではすでに白兵戦が行われていた。

「オラオラ~!!かかってこいやぁ~!!」

レイバンが剣を振り回し敵を怯ませる。

ヒースコートが思った通り、敵は海賊。

ブラックエンジェル号に突っ込んできたのか、奴らの船がすぐ横についていた。


「知らない旗印だな…」

敵海賊団の象徴を確認してからヒースコートは甲板を見回した。

先陣切って敵を切り裂くレイバン率いる戦闘部隊。

彼らの猛攻に敵側は気圧され、たじたじだ。

そっちから仕掛けてきたというのに、なんとも情けない。


「テメーら新参者かぁ?弱っちいくせして俺様にケンカ売るたぁ、イイ度胸じゃねーか。ああん?」

敵が怖じけづき、ほぼ勝敗も決したような段階になって初めて、船長ダリウスが動いた。

長剣を片手に敵の大将へ突進する。


「くそっ…!好き放題いいやがって!!」

大柄な相手がダリウスの一撃を剣で受け止めた。

力が拮抗して交わる刃がガチガチと鳴る。

「おいテメー、この俺様を誰だと思ってやがる。クレマン海賊団、復讐の死神ッつえばわかるかよ」


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