海賊王子ヒースコート(1)
大人しく片耳を吹っ飛ばされるなら、命だけは助けてやる。
この取り引きにキャプテン・マイクは生唾を飲み込んだ。
片耳か、命か。
「………いいだろう。好きにしやがれ」
「いいのか?海軍との繋がりを正直に話すなら赦してやるが?」
「だから繋がりなんてねぇ!!海軍なんざ知らねぇよ!!」
「そうか。なら…」
ヒースコートの指が撃鉄にかかる。
その時――。
「ヒースコート!!そいつら全員殺しちまえ!!皆殺しだ!!」
突然レイバンが叫んだ。
敵船に飛び移り、お宝でもないかと今の今まで船内を物色をしていた彼だったが、なぜか怒りの形相で戻ってきた。
「どうしたレイバン。なんかあったか?」
船長ダリウスが聞くと、レイバンは人を睨み殺す勢いの眼差しでキャプテン・マイクに迫った。
「船内に子供がいる。テメーら、人身売買してやがるな!?」
若獅子の怒りを孕んだ咆哮が甲板に響き渡った。
「生きてる子はまだいい。でもよ…生きて縛られてるそいつらの隣に、死んだ子供の死体が転がってんだよ!!テメーら!小せぇ子供を商品にしたあげく餓死させただろ!!あ゙あ!?」