海賊王子ヒースコート(1)
ジック島もセルーデン島もセルディスタ王国に属する島で、本土と距離が近く人口も多い。
だが、治安の面に関しては本土の足元にも及ばないほど荒れていた。
特に貧困を極める最下層民が暮らすエリアは人身売買の温床になりやすい。
「ほう…ジック島か。昔から人掠いで有名な島だよな~。知ってっか?俺様の親父タイタスもな、ガキん頃、ジック島で人身売買に巻き込まれてオグランドへ売り飛ばされたんだぜ」
ダリウスがマイクの鼻先を剣の先端で軽く突く。
「テメーらみてぇなクズがいるからガキが苦労すんだよ」
「ま、待ってくれ!もう二度としない!海賊からも足を洗う!だからっ!!」
必死に命乞いをするキャプテンをダリウスは鼻で笑い飛ばした。
「さっきヒースコートが言ってたよな?テメーらの言葉は信用できねーんだよ」
捕虜達の運命は決まった。
「地獄でガキどもに詫びろ」
その後、甲板には銃声と断末魔の叫びが響いた。
そして、死者の身体は一人残らず海に投げ込まれたのだった。