海賊王子ヒースコート(1)
「そこなら僕もよく知ってるよ」
幼い少女を看病していたエリオットが話に入ってきた。
「ミストフィーズは僕の生まれた町だからね」
「そういや、お前もセルーデン島だったか」
「うん。あそこは貧富の差が酷くて…僕はあんまり好きじゃないや。できることなら二度と戻りたくないよ」
悲しげに顔を歪めるエリオット。
そんな彼に、少年は訴えるような眼差しを向けた。
「なあ、あんたもそこ生まれなら、わかるだろ?俺らには…帰る家なんてないって」
「うん…わかる。僕も、帰る家なんてないんだ」
少年とエリオットが通じ合う中、唐突に一人の少女が手を挙げた。
「アタシは帰りたい!」
大きな声が食堂に響く。
「お家に帰りたいよぉ!」
強い主張が泣き声に変わる手前、アイリーンが優しく問い掛けた。