海賊王子ヒースコート(1)


 この日、クレマン海賊団の甲板では、海賊船には珍しい光景が乗組員達を唖然とさせていた。


「ほ~ら、高い高~い!」

「たか~い!」

甲板長ことレイバンが小さな男の子を肩車している。

「つぎ、ぼく!」

「わたしも~!」

「はいはい、順番な~」

子供達にせがまれて満面の笑顔。

楽しそうである。


「くぉ~ら!!レイバン!!」

「あ、船長」

そこへ部下から助けを求められたダリウスが登場した。

「テメーは何やってんだ!ここは幼稚園か!?テメーは保育士か!?ガキ共とじゃれてねーで持ち場につけや!!」

当然のことを怒鳴って注意すると、レイバンはわずかに瞳を潤ませた。

「スンマセン。けどオレ、子供好きなんですよ。もうちょっとだけ時間下さいっ!」

周りにいる子供達と一緒に無垢な眼差しでダリウスを見上げるレイバン。

若獅子として恐れられている彼はどこへやら、今は単なる子供好きの兄ちゃんにしか見えない。


「……ったく。わーった。後一時間だ」


レイバンの懇願作戦に負けたダリウス。

彼も口は悪いが基本的に子供には甘いのだ。

「よっしゃ!!船長サイコー!!」

「うるせー」


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