海賊王子ヒースコート(1)

ローズマリーに苦笑いをしていると、隣でヒースコートがハッキリ言った。

「アイリーンは俺のだ」

この理不尽な「俺のもの」宣言にローズマリーが食ってかかる。

「うそだ!うそつき」

「嘘じゃない。アイリーンと結婚するのは俺だ。わかるか?」

「わかんなーい!!」

「このガキっ…」

ヒースコートの横で聞いていたアイリーンは「結婚」という言葉にドキリとした。


(ヒースさんは、私とのことを考えて下さってるんですね…)


内心で嬉しさに浸っていると、ヒースコートの視線がアイリーンの左手薬指に向けられる。


「こんなものをしているから…」


唐突に左手を掴まれ、婚約指輪を抜き取られた。

「え?ヒースさん何を?」

そしてヒースコートは、奪った彼女の婚約指輪を海に放り投げた。

「あっ!!」

悲鳴に似たアイリーンの叫びが甲板に響き渡る。

「ヒースさん!どうしてこんなことを…!」

咎めるような表情でヒースコートに向き直ると、そこには見下すような眼差しでアイリーンを見つめる彼がいた。


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