海賊王子ヒースコート(1)
「いんや…。奴は親父が殺されてすぐ船を降りた。今は生きてんのか死んでんのか…わかんねーな」
一瞬だけ表情に陰りを見せてから、船長はニカッと笑みを浮かべた。
「アーロンは強くてフトコロのデケー奴だったけど、ちょっとタカビーでな。ヒースコートもそんな雰囲気だろ?」
「タカビー?」
「高飛車ってこった」
意味を理解して妙に納得してしまったアイリーン。
「あいつ、ゼッテー自分から謝らないタイプだぜ」
人の婚約指輪を投げ捨てても「ゴメンナサイ」とは決して言わない。
それは自分が悪いと思っていないから。
彼は尋ねたではないか。
「俺が好きか」と。
(私は、自分の気持ちを偽りたくない…)
いつまでもギルバートとの婚約指輪をしていてはいけなかった。
(覚悟を決めなければ…)
この翌日、船はオグランド共和国に到着した。