海賊王子ヒースコート(1)
第五話:処刑された少年
オグランドの北に位置するベルナンク港は活気のある港町だ。
船から降りて町のメインストリートを歩きながら、アイリーンは物珍しげに辺りをキョロキョロ見回した。
「そこのお嬢さん、寄ってきな!釣ってきたばっかの魚だよ!」
海がすぐそこだからか、魚売りが多い。
「一匹どうだい?鮮度ならうちが一番さ!」
売り手の元気な声に惹かれ、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
傍にいるヒースコートは気が気じゃない。
「アイリーン、あまり離れるな。俺の隣にいろ」
「す、すみません!つい…」
初めて他国を訪れたアイリーンはワクワクする気持ちを抑えながら苦笑した。
現在、彼らは子供達をともなって町の教会に向かっている途中だ。
その教会は孤児院でもあり、船長ダリウスのよく知る神父が院長をしている。