海賊王子ヒースコート(1)
整然と並ぶたくさんの白い墓石。
ダリウスは迷うことなく敷地の奥にある小さな墓石に近づいた。
「よう。また来てやったぜ」
話し掛けながらその墓の前にドカリと座り込む。
(ダリウスさんのお知り合い?どなたのお墓なのでしょう?)
アイリーンは墓石に刻まれた死者の名前を読もうと一歩、前へ出た。
国は違うがセルディスタとオグランドは同じ言語を使っている。
この二国だけではなくオグランドの隣国、フォース帝国やドニエール王国といった大国も共通言語だ。
ゆえにアイリーンは刻まれた文字を難無く読むことができた。
「クレマン・フォール…?」
クレマン・フォール。
そこにはそう彫られていた。
(クレマン、とは……クレマン海賊団の名前では…?)