海賊王子ヒースコート(1)
そして付け足すように船長は言った。
「この地方でクレマンっつーのは、“慈悲深い”って意味があるんだと」
――慈悲の心を忘れるな
クレマン海賊団の掟を思い出し、アイリーンは切ない気持ちになった。
全ては繋がっており、その一つ一つには必ず意味があるのだ。
海賊など単なる海の荒くれ者だと軽蔑する人間もいるが、それだけじゃない何かを彼らも持っている。
それは、人であるがゆえに――。
「……白く輝く…満月の下(モト)」
不意にダリウスがあの歌を口ずさんだ。
「離れてゆく魂が…希望に触れたくて、手を伸ばし……「僕はここにいるよ」と叫んでる…」
ずっと黙って佇んでいたヒースコートも合わせて歌い出す。
アイリーンも自分の記憶にあるメロディーラインを共に歌った。