海賊王子ヒースコート(1)


 クレマンの墓参りを終え三人が礼拝堂に戻ると、ミロ神父と教会に残る子供達が今後について話をしていた。

そこへ大股で近寄るダリウス。

気づいたミロ神父は愛想のよい笑顔でこう報告した。

「決まったよ。五人残る。後の四人はセルディスタへ帰りたいみたいだから、送ってあげなさい」

「へいへい」

「丁重にね。怖い顔して怒鳴っちゃダメだよ?」

「あ~、うっせぇー」

ミロ神父のお小言を右から左に聞き流すと、ダリウスは腰に下げていた革の袋を近くの椅子にドカッと置いた。

「ん、これ。今回の分」

「………いつもすまないね」

「べつに、単なる気まぐれだっつの」

袋の中身は金貨。

ダリウスはここに来る度に金を置いていく。

ミロ神父が強制したわけではない。

父親のタイタスが昔からやっていたことを真似して孤児のために寄付しているのだ。


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