海賊王子ヒースコート(1)
ありがたい気遣いにアイリーンが感謝を述べると、ヒースコートは少し躊躇ってから彼女の頬に手を伸ばした。
「アイリーン…」
「ヒースさん…?」
形は綺麗だけれど男らしい無骨な指に優しく撫でられて、ドキリとなる。
不意にアイリーンはヒースコートのことを「男」として意識した。
否、意識させられたのだろうか。
彼の指が頬を撫で唇をなぞり、顎をくすぐった。
そして――。
「あっ……ん…」
重ねられた唇。
絡め合う舌。
愛おしさをわからせるように深く激しく求められ、徐々に身体が熱くなる。
情熱に支配されたヒースコートの口づけはアイリーンの思考を甘く切なく蕩かした。
「…………お姉ちゃん」
物陰から聞こえた小さな小さな呟きは、波の音に掻き消されたのだった。