海賊王子ヒースコート(1)
第六話:虜囚となりて…
翌日の早朝、太陽が昇るのと同時にベルナンクの港へ一隻の商船が入ってきた。
「やっと着いたわね」
商船から降りオグランドの大地を踏み締めたのは、眩しい金髪が特徴のれっきとしたセルディスタ人――ヴィンセント提督だった。
「全く!オグランドの海上で奴らに追いつくはずだったのに、この商船遅すぎよ!!」
「過ぎたことを騒いでても虚しいだけですよ~提督」
黒髪眼鏡の部下、リチャード・モーガン少佐が持ち前の胡散臭いニコニコ顔でヴィンセントの後ろを歩く。
「過ぎたこと!?その過ぎ去った時間の中で私の可愛い可愛いアイリーンがあいつらに、あ~んなことやこ~んなことを強要されて大切なモノを失っていたらどう責任とってくれるわけ!?」
「提督、お静かに」
上司の被害妄想を海軍期待の星、ギルバート・ロックウェルが冷ややかな声で黙らせた。