海賊王子ヒースコート(1)
これを「阿吽の呼吸」と言うのだろうか。
リチャードは視線のみでギルバートの言いたいことを汲み取った。
パンパンと手を叩き、自分の部下を呼ぶ。
「ハワード!連れて来て~」
「はい!少佐」
ハワードと呼ばれて返事をしたのは、赤茶色の髪に清んだ青い瞳をもつ青年だった。
ハワード・フォンテーン中尉。
上司に忠実で仕事には一生懸命の真面目人間だが、ちょっと抜けているのが玉にきず。
「そこがまた良いんだよね~。からかいがいがあって」とリチャードに可愛がられている。
「連れて来ま――うわああっ!!噛むなぁあ!!」
そんな彼が船内から連れて来たのは、二匹の犬だった。
二匹とも黒い大型犬。
そして、一匹につき頭が二つある。