海賊王子ヒースコート(1)
ギルバートに言われ、ヴィンセントはポケットからアイリーンのハンカチを取り出した。
「はい、これ。汚したら承知しないわよ」
ギルバートはハンカチを受け取ると、ベスとペスに臭いを嗅がせた。
「この香りの人間を捜せ。いいな」
ご主人の言葉にベスとペスが元気よくワンと鳴く。
そして早速、辺りの臭いをクンクンと嗅ぎはじめた。
「アイリーンの捜索は私がするわ」
「では、我々は海賊どもの方を」
ロッチとロット、それから他の部下もともなってギルバートが歩き出す。
一方、ベスとペスについて行く上司の背中を見送りつつ、リチャードはコソッと部下に命令した。
「ねえ、ハワード。シスコン提督一人じゃ心配だから、君も一緒について行って?」
「はっ!承知しました」
こうして始まった海軍の密かな捜索活動。
これらの様子を上空から、一羽のジャマラガラスが興味深げな瞳で観察していたのだった。