海賊王子ヒースコート(1)
「えと……その…」
泳ぐ瞳を観察し、ギルバートは何かを察したようだった。
コツと靴音を立てながらアイリーンの傍に近寄り、座っている彼女の両肩に彼は手を置いた。
「アイリーン嬢」
微かに震える、切ない囁き。
「私が貴女との婚約を決めたのは、経済的利益のためだけだと……本気で思っていらっしゃいますか…?」
それは、冷酷な海軍大佐とは程遠い、愛する女性を求める一人の男の声だった。
「ち、違うの、ですか…?」
てっきりギルバートも親に勧められて自分との婚約に承諾したものとばかり思っていたアイリーンは目を丸くした。
まだ互いに恋愛感情はないだろうと考えていたのだが…。
「私は、貴女を愛しています」
告げられた言葉が、胸に響く。